※血液透析の目的
腎臓の機能がほとんどがなくなった「腎不全」「急性腎障害」などの腎臓疾患になった人が、働かなくなった腎臓の代わりに行う治療です。腎臓の機能を回復させる治療ではありません。
※血液透析の仕組み
仕組みの基本は「拡散」と「ろ過」で、慢性腎臓病のステージ5(末期腎不全)になった時に行う腎代替療法には、腎臓移植の他に透析療法があります。透析療法には血液透析(HD)、血液濾過透析(HDF)、血液透析濾過(O-HDF)、腹膜透析(PD)に分類されます。
上記の透析方法は、腎臓の主な機能の「老廃物の除去」「水分調節」を行い、その仕組みには「浸透圧格差」を使用していて物理的な機序が生かされています。血液中の老廃物は「拡散」によって透析液に移動します。拡散は透析の基本となる物理的な現象で、溶質濃度の違う2種類の液体が、ダイアライザーの半透膜(透析膜)で目に見えない小さい穴の開いた膜を境にして接すると、濃度の高いものは薄い方へ、薄いものは高い方へ移動します。透析は濃度格差による性質を使用し半透膜を使って老廃物・余分な水分を除去していきます。透析患者の血液中の物質は、老廃物が含まれていない透析液に移動します。
2012年の診療報酬改定で正式に健康保険に適用されてから急速に「オンラインHDF(O-HDF)」が増えてきました。このオンラインHDFは、透析液に補充液をそのまま使用します。大量の体液(25~50L)を取り除き、その代わり、ほぼ同じ量の透析液を体内に注入して体液を補充します。
※血液透析の原理
患者はベッドに横になった状態、または椅子に座った状態で透析を受けます。体内から出された血液は「ダイヤライザー」に入り、血液が送り込まれた「ダイヤライザー」の中は細いチューブが複数束ねられて出来ていて、「ダイヤライザー」の外側を血液が流れ、内側を逆方向に透析液が流れます。
透析液はナトリウムやカルシウムなど正常な血液に近い電解質で出来ていて、「ダイヤライザー」の中で水分・老廃物を取り除き正常な血液にしています。物質は基本的に濃度を均一にしようという性質かあり、濃い液体が薄い液体に流れ込み濃度を均一にしようとします。「ダイヤライザー」はこの原理を応用しています。「ダイヤライザー」内では細いチューブの外側を流れる透析液に不足する物質が、内側を逆方向に流れる血液に細いチューブの膜を通して、透析液から血液に物質が移動します。血液中の不要な物質や余分な水分は透析液に流れ込み、物質が移動し合うことで濃度を均一にし、濃度が丁度よくなった血液は患者の体に戻されます。
透析治療は週3回4 ~5時間行う必要があります。また、健康な人の腎臓は週168時間かけて行われていますが、血液浄化療法で短時間に行うため、急激な電解質の変化と蓄積した尿毒症性物質の急激に少なくなり「不均衡症候群」を起こすことが多いです。
※血液透析のリスク
人工透析を受けるにあたってはリスクがあります。ポンプの力を借りるという事は、大量の血液を循環させるので心臓に凄く負担がかかり、高齢者などで間違って針を抜いてしまうなど命に関わる出血を起こす可能性があります。透析室にはスタッフがいるので早期に対処できる体制が確立しているので心配はないでしょう。
透析の期間が長くなってくると腎機能が低下すると尿が出なくなり、透析と透析の間に体重が増えやすくなり、体重が増加する事が多くなります。それが原因で透析中に血圧が下がったり、透析後に倦怠感が出るなど患者の体に負担が増すので、日常生活の水分の取り過ぎや食べ過ぎには十分に気を付けて下さい。自己管理をしっかりとしていかないと命を縮めることになります。
※血液透析の合併症
血液を体外に循環させるので、それに伴う合併症が出やすくなります。
〇血圧変動
体内の血液が一時的に低下するため、血液透析中は血圧が低下しやすくなります。血圧低下により、あくび、吐き気などの症状が現れることがあり、症状が酷くなるとショック状態になることもあります。
〇出血傾向
体の外に出た血液が固まるのを防ぐため、血液透析中は血液を固まらないようにする抗凝固剤と呼ばれる薬を使用するため、治療中は出血しやすくなります。
〇不均衡症候群
透析導入後は、透析によって急激に体内環境が変化するため、透析中や透析後に頭痛や吐き気などの症状が現れやすくなります。通常、2~3回程度透析を経験することで症状はなくなります。
〇アレルギー
透析治療に使用するダイアライザーの透析膜や、薬剤に対するアレルギーが出る場合があります。アレルギー症状はかゆみや発熱などが多いですが、まれに呼吸困難や著しい血圧の低下などの重篤な症状が現れることもあります。
〇シャントトラブル
血液透析では「ダイアライザー」に大量の血液を流すので、腕に動脈と静脈をつないだ「シャント」を作ります。シャントの作ることによって、血管の狭窄や閉塞が起こる事ががあるので、シャントの音を毎日確認し良好に流れているかを必ず確かめることが必要です。
〇その他
動脈硬化による心疾患。「二次性副甲状腺機能亢進症」による骨疾患。透析アミロイドーシスによる「手根管症候群」や「破壊性脊椎関節症」などがあります。この合併症は、透析治療が長期になることで起こりやすくなります。